鍼治療

当院では動物(犬・猫・ウサギなど)に「鍼治療」を行っています。鍼治療は体に負担が少なく、当院が目指す「動物にやさしい治療」の一つです。
 ではなぜ鍼治療が「動物にやさしい治療」なんでしょうか?

鍼治療の説明の前に

東洋医学では「気」と「血」を体の基本と考えると書きましたが、その「気」と「血」、「気血(きけつ)」が通る道を「経路(けいらく)」と言います。経絡は、全身に縦横無尽に張り巡っています。その経路には「経穴(けいけつ)」いわゆるツボがあります。つまりツボも全身にあるのです。これは人間に限ったことではありません。あらゆる生物に「経絡」「ツボ」はあります。
東洋医学では病を治すために「気」と「血」の巡りを正常に戻すお手伝いをします。そのお手伝いの方法の一つが「鍼治療」です

鍼治療とは

ツボを鍼で刺激して病を治す治療法です。
 病は「気血」の巡りが異常な状態、つまり「気血が滞っている」状態です。それぞれの「経路」や「経穴」には特定の臓器と繋がりがあるとされています。
 そこで、気血の滞りを解消するためにツボを鍼で刺激します。ツボの刺激が経絡に伝わることで気血の滞りを解消し、そこに繋がる臓器を治癒する仕組みです。

鍼治療

 「ツボを刺激することで病気を治す」だけではちょっと怪しい感じがしますよね。
 もっとわかりやすく説明すると右図の様になります。

 実にシンプルですね。筋トレがトレーニングすることでわざと筋肉を痛めつけ、修復する力で筋肉の増強を図るのと同じです。どちらも自然治癒力によるものです。
このように、本来持っている自らの自然治癒力を活性化することで病を改善することから体への負担が少ないため「動物にやさしい治療」と考えています。

病気の回復以外にも…

  • 腰痛や膝痛の緩和
    ツボへの刺激で痛みを脳に伝える神経経路をブロックすることで痛みが和らぎます。
  • 新陳代謝を高める
    筋肉の緊張をゆるめることで血流が良くなり新陳代謝が高まります。
  • 疲労回復
    血流が良くなることで疲労物質が流れ、筋肉の疲労が回復します。
  • 自律神経が整う
    ストレス神経(交感神経)をゆるめ、リラックス神経(副交感神経)を高めることで自律神経が整います。

このような「未病(みびょう)」と言う病気でないけどつらい症状の緩和に効果があります。

当院での鍼治療

 様々な症例に応じた鍼治療をおこないます。
 その中でも特に多いのは「腰の椎間板ヘルニア」の患者さんです。

 ひとくちに「腰の椎間板ヘルニア」とは言ってもグレード分けされます。

  • グレード1:腰の痛みがある。神経の麻痺や症状は見られない
  • グレード2:歩行が可能だが片足が不自由
  • グレード3:歩行は不可能。力が入らないので立てない
  • グレード4:後ろ足が両方とも麻痺しているが、深部痛覚*がある。尿意も麻痺するため垂れ流し状態
  • グレード5:後ろ足が両方とも麻痺していて、深部痛覚*がない。

*深部痛覚の有無は、足先に痛い刺激(つねる、器具ではさむ等)を与えたとき、足を引っ込めたり、蹴り出したりする反射の有無で判断します。

西洋医学の治療ではグレードが低いうちは内科的治療(注射や投薬)となり、グレードが4になると外科的手術が勧められます。西洋医学の治療です。

そこで

  • 体への負担を考えて手術を望まない
  • 高齢で手術が難しい
  • 金銭的な負担を考慮

といった「最初から鍼治療を選択」

  • 内科的治療(投薬)や外科的手術で改善しなかった

といった「西洋医学では改善しなかったがどうにかしてあげたい」
という様々な理由から来院され、鍼治療を受けています。

「腰の椎間板ヘルニア」以外にも、首の椎間板ヘルニア、腰痛や持病の症状(痛みや気力減退)の緩和、内臓的病気の改善、便秘解消、体調を整えるため等、個々の症状に応じた鍼治療を行っています。

全ての子の病や症状に効果があると言う訳ではありません。病気の程度は各犬猫で全て違いますので、一度ご相談ください

鍼治療の流れ

東洋医学の診察・診断は「四診」で行います。 それは診察室に入る前から始まっています。
  1. 望診:歩き方・座り方・立ち上がり方・震え・痛み・尻尾の振り方などの行動、目・舌・鼻の状態を診る
  2. 聞診:吠え方・声の大きさや力強さ・臭い・呼吸音など獣医師の嗅覚・聴覚で診る
  3. 問診:飼い主様から症状やこれまでの経歴・普段の生活・性格などを聞く
  4. 切診:体全体の状態・患部の状態・脈の強さ、リズム、左右差を診る
そうして患者様の全体を知ることで必要な治療を判断し、飼い主様へ診断を伝え鍼治療に入ります。

鍼治療

1後ろ足の付け根にある股動脈を触って脈拍を確認

2必要な場所に鍼を刺します。

3良い脈に変化したら鍼を抜いて次の針を刺します。

4鍼を刺している間、推拿(マッサージ)や理学療法(リハビリテーション)を行います。

※3と4繰り返すことで全体の脈を整えます。

5時には鍼を通じて電気を通す電気鍼を行ないます。​

6全体の脈が整ったところでレーザー治療(温熱療法)をします。

 初診の場合、四診(診察・診断)から始まり、その子を知るために多くの時間をいただきます。その他にも飼い主様の要望を聞いたり、鍼治療についての説明などを含めると30分から1時間程度のお時間をいただいています。

2回目以降はその日の状態に合わせて鍼治療を行いますが、それでも30分程度のお時間をいただきます。
そのため、鍼治療をご希望の際は事前のご予約をお願いしています。

よくある質問

症状の改善が見られることが多いです。症状によって治療の効果や治り方、かかる時間、満足度は変わります。特に椎間板ヘルニアでは発症後の早い段階で鍼治療を受けた子の方が効果も早く表れたり、治癒の可能性も高いことが多くみられます。早めにご相談ください。

皮膚に先の尖った針を刺すのですが、普通の注射針の1/100くらいの細さです。チクッとはしますが、刺されても、患者さんはほとんど気が付かないようです。

「気」が消耗されるために疲れてしまい、鍼が終わった後(帰宅途中や帰宅後)はよく眠る子が多いです。また、体内の「水」の流れが変わるため、普段より水を多く飲んだり、逆に飲む量が少なかったりします。いずれも一過性で次の日には元に戻ります。

腰の椎間板ヘルニアと診断された歩行障害(歩けるけどおぼつかない)、歩行困難(立てずにほふく前進している)の子が最も多く、その他にも首の椎間板ヘルニアで首が上がらない子、高齢で足腰が弱ってきている子、皮膚炎、便秘、内科的病気で西洋医学の治療と併用して改善を図りたい子など症状も年齢も犬種も様々です。

例えば椎間板ヘルニアの場合、最初は週に1〜2回、症状の改善状態に応じて2〜3週に1回と間隔を伸ばしていきます。初診の際に10回は通院を覚悟してくださいとお伝えしていますが多くの子が10回を待たずに様子見となっています。10回の理由は、改善が思わしくない場合など、今後の治療方針を飼い主様にも考えていただくための目安です。それ以外の外科的な症状の場合も同様です。
内科的症状の場合は症状に応じますが、多くは2〜3週に1回、症状が落ち着いたところで様子見となります。
様子見になった以後は未病の観点からも数ヶ月に1回程度の通院をお勧めしています。

治療中の病気にもよりますが、基本的には受けられます。効果などは病気によりますので詳しくはお問い合わせください。その際、治療中の病気に関しては基本的にはかかりつけの病院で治療を継続していただいてますのでご安心ください。

施術者(獣医師)により流派や病状の捉え方が違い、手技も異なります。それはその子に合う合わないに大きく影響します。そのため他院で効果の無かった子でも当院で効果が見られることもありますし、逆に当院で効果の無かった子でも他院で効果が見られることもあります。

鍼治療の効果が認められ多くのペット保険会社で適用となっていますが全ての保険会社で対応はしていません。またご加入のプランにもよりますのでご加入している保険会社へお問い合わせください。なお、当院が窓口精算の対応をしているアニコム・アイペットでは保険適用となっていますので保険証を忘れずにお持ちください。